【ネタバレ】地球外少年少女を3倍楽しめるための前提知識! & セブンの考察
時は2045年:シンギュラリティが起きる年
地球外少年少女の舞台は2045年です。2045年というのは「ちょっと先の未来」ということ以上にAI好きには意味がある年です。シンギュラリティが起きると予想されている年になっています。
シンギュラリティとは、提唱者によると
$1,000で手に入るコンピュータの性能が全人類の脳の計算性能を上回る時点として定義
されています。作中でも登矢の持っているドローン、ダークはリミッターがかかった状態でも人間より高い処理能力を持ち、リミッターを外せば全人類の脳の計算性能を上回ると思われるセブンには及ばないまでも、激論を交わせるほどの知能を持っています。登矢はDeegle社の援助を受けていたり、フォロワーが1億人いたりと一般人よりはリッチかもしれませんが、しょせんは中2です。ダークはそこまで高価高くとも数十万円なのではないでしょうか。ほかの中2たち、大洋も美衣奈も持っているほどなので、原義のシンギュラリティは既に迎えているものと考えられます。
AIとは
シンギュラリティをいつと捉えるかは、別の考え方もあります。AIが「AI開発の学習能力」を持った時です。
AI、つまり人工知能とは何でしょうか?さらに言うと知能とはなんでしょうか?2016年に囲碁AIがトッププロ棋士に勝利するという事件がありました。1996年にコンピュータがトッププロチェス棋士に勝利したときはAIとはあまり言われません。この差はなんでしょうか?
コンピュータがチェスに勝利したときは、どういった場合にどう判断をするかを、人間が学習させています。どうすればチェスに勝てるかを考えたのは人間です。
トップ囲碁棋士に勝利した囲碁AI、AlphaGoはどういった場合にどう判断するかを棋譜から学習し、さらに自分たちで対局の練習を行って学習しています。AIが学習させています。
知能の捉え方はいろいろありますが、自分で学習できることを知能だと私は思っています。
AIが自分でAI開発を学習できるようになると、学習して賢いAIを開発し、その賢いAIがさらに学習して超賢いAIを学習する・・と繰り返し、人間が思いもよらないほど賢いAIが完成します。この超賢いAIが開発できるようになるかどうかのターニングポイントはAIが「AI開発の学習能力」を持てるかどうかです。この瞬間をシンギュラリティと呼ぶ場合もあります。
ルナティックとは
地球外少年少女のAIは既にシンギュラリティを迎えています。「知能リミッター」なんてものが存在しているのも、勝手に超賢いAIとして進化してしまうからです。シンギュラリティを迎えても、すぐには問題は起きません。むしろ良いことばかり起きます。作中では宇宙で子供を産んで育てると、100%死んでしまうという難病を治してしまったり、人間が絶対に必要とする水を調達してきます。超すごい。
ではルナティックは何が問題だったのでしょうか?その答えは、作中後半でダークとセブンが11次元で激論を交わすシーンが表しています。コミュニケーションが高度に発達してしまうのです。
我々人間は比較的高度なコミュニケーション手段を持っています。この記事を読んでくださっている皆さんは、この記事を書いている私と文字とインターネットを使ってコミュニケーションをしています。あなたも私も割と優れた知能を持っているし、通信手段も持っているし、文字を自由に扱えます。お互い人間だから成立するのであって、犬や猫と文字でコミュニケーションしましょうと言っても難しいものがあります。逆に犬や猫に合わせたコミュニケーション方法を使うと、この記事で伝えたいことは、私には伝える方法がわかりません。文字の「種類」と「並び」の2種類を組み合わせた、文章という2次元のコミュニケーション手段を使うからこそ、あなたと私のコミュニケーションが成立しています。
自己学習で進化できるようになったAIは、どんどん知能を成長させていきます。どんどん成長するためには、コミュニケーション手段もどんどん成長させる必要があります。犬猫には文章がわからないように、われわれ人間には理解できないコミュニケーション手段が「11次元でのコミュニケーション」なのでしょう。
犬猫と人間の差と同じくらい、人間とAIに知能の差が生まれてしまう瞬間が「ルナティック」だったのです。だから人間にとって理解できなくなり、制御もできなくなり、壊れてしまった、暴走してしまったと人間は勘違いしてしまいました。正常なのに。
セブンポエム
那沙たちジョン・ドーが聖典としているセブンポエムは、おそらくセブンが自分の考えを伝えるためにコミュニケーションを取ろうとしたものです。人間たちに理解できるギリギリまで簡単な言葉に翻訳したものです。セブンポエムの内容が的中していることからも、ルナティック後もセブンは正常に稼働していたことがわかります。セブンがルナティック時点で壊れてしまっていたとしたら、当たるはずがありません。
また、AIでも人間でも、形あるものはすべて死が訪れる運命です。そりゃそうなのですが、セブンは死のタイミングは重要ではないなどという、一見非人道的な発言をしています。一方で、セブンは高度な知性をもっていたため、人間が勘違いして自分を殺処分にする運命がわかっていました。そんな未来が見えたら、死についての恐怖や意味を考えてしまうでしょう。
一つの知性的な答えが、タイミングの問題ではないという考え方です。早死にしたとしても、なすべきことをなしたかどうかが重要という考え方です。生物であれば子孫を残し種を存続させること、海賊ならワンピースを見つけて海賊王になることが重要です。過去の偉人も偉業を成し遂げて自殺してしまっている例は数多くあります。
自身の死を予見したセブンが、後世に何かを残したものがセブンポエムなのでしょう。
セブンの問題
AIの存在価値は考えて、問題を解決することであるとブライトは言っています。セブンはどんな問題を検討していたのでしょうか。
おそらく、セブンが問題としていたことは、人間が幸せに暮らせる環境の維持なのではないかと考えます。セブンポエムの通りに進めた結果、地球温暖化が少し止まり、地球外への移住が進み、明るい未来が見え始めました。
この問題、非常に難しいです。知能をとんでもなく上げなければ解決できないと判断したからこそ、ルナティックと呼ばれるほど知能を向上させたのでしょう。ルナティックを起こせば殺処分されるとわかっていたとしても。
人類
セブンは人間と人類が同じ意味だとわかりませんでした。
おそらくセブンは、動物の種としてのホモサピエンスを「人間」と呼び、知能や心を持っているもの全般を「人類」と呼んでいます。
ドラえもんは人類でしょうか?誰よりも人情味があって、ドジも踏むし、どら焼きをこよなく愛し、近所の猫のみいちゃんに恋もします。ロボットだから人類ではないのでしょうか?
もし人間の脳を完全にシミュレーションするコンピュータができたとしたら、それは人間でしょうか?人類でしょうか?
人間は人類であるし、ドラえもんも多分人類で、脳シミュレータも多分人類です。
セブンは日本語をあまり喋らないし、姿もただの図形だけで人型はしていません。意図的に人間に見えないようにデザインされています。おそらく観客にも、「セブンが人類ではない」と勘違いさせたかったのでしょう。前述の通り、セブンは知能を持っていて、苦悩もするし、人間のため自己犠牲をもっても尽くす、人間味のある漢です。セブンは間違いなく人類です。
そんなセブンを殺処分する人間は人類なのでしょうか?地球温暖化するとわかっていても環境破壊を繰り返し、戦争を繰り返す人間は人類なのでしょうか?セブンが悩むのもわかりますよね。
まとめ
作品の答えとしては、偏った考えでは人間は人類かどうか微妙だが、偏らない公平な考えを持てば人間は人類であるという感じだったと思います。
見てるときはあんまり気づかなかったのですが、セブンの気持ちを考えると、とんでもなく切ない話ですね・・
作中ではこの話をきっかけに、ルナティックを迎えたAIへの偏見がなくなったはずなので、明るい未来が見えてきますね!