よく考えろというときに、時間をかけて考えると怒られる
「奥深く」と「幅広く」と「問題定義」の3種類がある
「よく考える」方法には3つあります。
- そもそも何が問題なのか、観察して定義すること
- 奥深く、より先を見通せるまで考えること
- 幅広く、色んな視点から考えること
問題定義
例えばカレールーやニンジン、ジャガイモ、豚肉といった材料が並べてある状況で、ニンジンを切るように頼まれたとします。どのように切るべきでしょうか?
この時点だと、正解にたどり着くことは実は不可能です。状況から察すると、カレーを作っているようです。カレーに入れるためにニンジンを切るなら、乱切りにすれば良さそうです。 ですが、カレーを作っているとは言ってはいません。頼んだ人に「カレーを作っているんですか?」と質問するまで正解しません。頼んだ人がカレーを作っていたとして、頼まれたニンジンをカレーに入れるとも限りません。カレーに添えるサラダのために切るように頼まれていたんだとしたら、乱切りはちょっと食べづらいです。なので、「カレーに入れるためにニンジンを切らなければならない」と問題を確定させなければなりません。
誰かの指示を受けているときは、指示している人が何を問題と捉えているか確認すること。自発的に動いているときは、自分が一体何をしたいのか、それをなぜやりたいのか言葉にしてみると良いです。どちらにしろ、文章としてアウトプットすると、より問題を明確に定義できます。
奥深く考える
カレーに入れるためにニンジンを乱切りにすればよいとわかったので、乱切りにしていきます。そもそも乱切りとは何でしょうか?ニンジンの場合、細いほうから回しながら塊状に切っていくことです。カレー等で煮込むときは薄切りにしてしまうと砕けてバラバラになってしまいます。四角く切ると、端っこのほうがどうしても変な形になってしまい大きさが一定にならず、火の通り具合がばらついてしまいます。乱切りにすると、簡単に一定のある程度の塊状の大きさを保てます。
このように、ニンジンを切るときには「乱切り」を使い、更に「乱切り」について表面的な情報だけでなく、その背後にある原因や影響、関連性を探ってゆき、更にそのことについて考えていくことが、奥深く考えることです。「よく考えろ」と言われたときにパッと思いつくのは、この奥深さではないでしょうか?
幅広く考える
奥深く考えるときは乱切りについて更に考察を深めましたが、今回の問題は「ニンジンを切るように頼まれた」でした。乱切りについて奥深く考えるのも「よく考える」ですが、別の角度からニンジンを切ることについて考えるのも、よく考えることです。
様々な角度から考えるときによく使うフレームワークが5W1Hです。Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)をそれぞれの角度から考えていきます。ほとんどの場合は聞けば済む話なので、指示を受けている場合は指示をしている人に聞いてみましょう。今回の場合で次のように想定しています。
Who: 家族のために自分が
What: ニンジンを
When: 2時間後の19時に
Where: 自宅のキッチンで
Why: いつもの夕飯でカレーを食べるために
How: 包丁で切る
どの「よく考えろ」なのか
よく考えろと言われているとき、「問題定義」「奥深く」「幅広く」のうちのどれを求められているのでしょうか。求めている人に聞くとおそらく「全部」と言われるのではないかと思います。なぜなら、どれかわかってるなら言ってるほうも、もうちょっと具体的にポイントを示して教えてくれているでしょう。どの点の考慮が足りていないか指摘できないが、まだ検討不足で、このままではうまくいかない予感だけがあるので、「よく考えろ」という指摘になってしまっている可能性が高いです。この教える側の実務スキルの高さと教育スキルの低さの不一致が、「よく考えろ」問題の本質なのではないかと思います。
一方、自分のほうで考えると、やれることとやれないことがあります。
問題定義をやれるか
問題定義は「よく考えろ」と頭ごなしに怒られているうちは、とにかく確認を取ればOKです。「こうしようと思いますがいかがですか?」「この点がわからないので、説明してください」など、とにかく聞きます。するとまた「それくらいよく考えればわかるだろ」と言われるかもしれませんが、それは無視してしまいましょう。だって既に考えてる最中なのですから。正解すると「よく考えろ」ではなく、OK的な返事が返ってきます。
相手が何を求めているか、今解決しなければならない問題はなんなのか、「確認を取る」ということは誰でもできるはずです。これは誰でもやれることです。
頭ごなしに怒られている時ではなく、自発的に行動しているときは、問題定義は非常に難しいです。確認を取る相手がいないからです。この問題は非常に難しいので、誰か教えてください。
奥深く考えられるか
奥深く考えるのは、知識と経験が必要です。先ほどの乱切りの話も、ニンジンをボロボロに煮崩れさせたり、物によって生煮えでゴリゴリになった経験がないと、奥深く乱切りについて考えられません。逆にそういう経験を積んでいたとしたら、ぱっと思い浮かびます。
つまり、考え始めたときに持っている経験や知識によってどれだけ奥深く考えられるか決まっているし、深く考えられない状態で時間をかけたところで深く考えられないのです。しかし「よく考えろ」と言われたときに「時間をかけて奥深く考えようとする」ため、なんだかよくわからないことになりがちです。
幅広く考えられるのか
幅広く考える例として、先ほど5W1Hを挙げましたが、幅広く考える方法はテクニックです。また、特定のことだけではない汎用的なテクニックです。カレーを例に5W1Hに当てはめてみましたが、5W1Hはカレー以外にも使えるテクニックです。乱切りは煮物にしか使えないテクニックであることと比較してみると、すごい特徴です。
5W1Hのように、多角的に考えられるようにするテクニックはいくつも存在しています。メリットデメリットの洗い出しだったり、ギャップ分析だったり、マインドマップのような図に起こすテクニックであったり、様々なテクニックが考案されています。
どれも実践しようと思えばすぐに実践でき、またこれで得た新たな視点は、問題定義にも役立ちます。
「よく考えろ」と言われたら結局どうすればいいか
まず時間をかけてうんうん唸っているのはやめましょう。「よく考える」のイメージはそれですが、考えた結果で何をアウトプットできたか見てみると、ただ時間だけが過ぎたのではないかと思います。
「よく考えろ」と言われたら、まず問題をはっきり説明できるか試してみます。「ニンジンを切れ」と言われてニンジンを切ったら怒られたという場合は、「(家族にカレーを作るために)ニンジンを切れ」という説明していないが共通認識が取れていない場合があります。とことん確認を取りましょう。
確認をとってもうまくいかない場合は、視点が足りていない場合があります。手始めに5W1Hで問題を説明できるか考えてみましょう。うんうん唸っているときと違い、Who・What・When・Where・Why・Howそれぞれに答えを書いています。この答えをアウトプットとして、これだけ考えたと説明してみましょう。